お知らせ
-インタビュー-
小さなシェアキッチンから広がった夢。家族で作るパン屋「チームボーダー」
シェアキッチンポルカを利用し、独立した方へのインタビュー取材を行いました。
今回は、2025年に堺市中区辻之にパン屋をオープンした「チームボーダー」さんです。
お忙しい中、ご協力いただきありがとうございます。
ぜひ、誰かの第一歩になれば嬉しいです。
家族とともに歩むパン作り


「チームボーダー」は、家族5人が関わる温かいパン屋です。
姉・まどかさんはメインでパンを作り、妹・つばささんがパン作りを手伝いながら販売戦略などの経営を支えます。
母・とみこさんは店頭で接客を通じてお客さんと会話を楽しみ、父はイベント準備や店舗の修繕などハード面をサポート。
小学6年生のまどかさんの娘・あんちゃんも、ときにはイベントを手伝う頼もしい存在です。家族それぞれの得意を活かすことで、自然とチームワークが生まれています。
姉妹のアイデアに加え、家族の協力があることで、イベント出店や店頭販売の経験を着実に積み重ねることができているとのこと。
まどかさん、パン作りの道へ
高校を卒業したまどかさんは、辻製菓専門学校で製菓やパンを学んでいました。当初、家族は「ケーキなどのお菓子作りの道に進むのでは」と考えていたそうです。
ところが就職活動の時期、先生からの勧めや母・とみこさんの「パンは生活に身近な食べ物だからこそ、きっとやりがいがあるはず」という言葉もあり、パンの道を選ぶことに。
その後は3つのパン屋で経験を積み、約20年間、職人として腕を磨き続けました。
姉妹の歩みと最初の挑戦

パン職人として約20年の経験を積んできたまどかさんですが、「自分のパンを売る」という発想はあまりありませんでした。
本人は「そんな簡単な世界じゃない」と思っていたのです。
そんなまどかさんをずっと励まし続けたのが妹のつばささん。
「お姉ちゃんのパンは絶対に売れる」――そう何年も言い続けてきました。
販売戦略やお店の運営方法を考えるのが得意なつばささんは、ときに熱心すぎるほど背中を押し続けました。あまりに言われ続けたまどかさんは、「じゃあ一度やって、売れないことを証明しよう」と腹をくくったのです。
ちょうどコロナ禍で時間ができたこともあり、大阪市内のシェアキッチンを利用して初めてのイベント出店に挑戦。準備したパンは100個。
結果は80個売れ、20個余ったものの、まどかさんは「80個も売れた!」と驚きと手ごたえを感じました。さらに、そのイベントでは忘れられない出来事がありました。
「今食べて美味しかったから、もう一度買いに来ました」と、同じ日のうちにリピートしてくれたお客さんが現れたのです。
これまで勤めてきたパン屋では感じられなかった“お客さんからの直接の声”を受け取った瞬間でした。
その体験が、「もっとやってみたい」という気持ちを大きく膨らませ、姉妹での挑戦を続けていくきっかけになりました。
シェアキッチンポルカとの出会い

初めてシェアキッチンポルカを知ったのは、レンタルキッチンを探していたときのこと。すでに別のキッチンを利用していましたが、大阪市内で遠かったり使い勝手がいまひとつだったこともあり、ネットで見つけたポルカに問い合わせました。
決め手となったのは、立地・料金・設備の良さ。
月ごとに契約プランを変更できる柔軟さも魅力でした。たとえば、売れない夏場はダウングレードしてコストを抑え、忙しい時期には一番お得なプランに切り替えることも可能。そんな融通がきく仕組みが、二人にとって大きな助けになったそうです。
夜を中心にキッチンを使い、イベント販売の準備も進めました。
しかし、最初の面談では少し驚いたと言います。
本来「シェアキッチンは、利用者側の条件が合えば入れる」と思っていたところ、ポルカ側からは、「どう使いたいのか」「どんな考えで進めるのか」など、面接のようにさまざまな質問がありました。
これは、ポルカは多くの利用者が共存するシェアキッチンだからこそ、協調性や利用者同士の関係性を大事にしているためです。
協調性に欠ける人が入ってしまうと、ほかの利用者の満足度にも影響が出るため、登録前にしっかりお話を聞くことで、入会いただいても大丈夫かを見せていただいています。また、食品を扱うため、衛生面の意識を含めお客さんに安心して届けられる食品を作ることができるかも重要なポイントです。
一方で、ボーダーさん側も「こういう使い方はできないか?」と要望を出し、一緒に実現できるように考えてくれたり、ダメなところはハッキリ指摘してもらえたりと、率直なやり取りができる環境だったと言います。
「最初は戸惑いましたが、ここまでしっかり言ってもらえると、気持ちを引き締めて利用できました」とまどかさんは笑いながら振り返ってくれました。
イベント出店や店頭販売での学び

ポルカで作るまどかさんたちのパンは、基本的にイベント出店用。
さらに月に一度は「お店を持ったときにどうなるか」を想定して、テイクアウトポルカで店頭販売にも挑戦しました。


最初は来客が少なく、「やっぱり難しいのかな」と感じることもありました。
そこでチラシ配布をスタート。
1,000枚配っても反応は1%程度と聞いていたため、初めは反応が薄くても心は折れませんでした。
続けるうちに、クーポン付きのチラシの効果も現れ、リピーターも増加。
月に一度の販売はやがて売り切れるほどの盛況となりました。
また、ポルカでの経験の良さは、他のメンバーと出会えることだったと言います。
キッチンで時間が重なれば自然と会話が生まれ、交代の時間になると「頑張って」と声をかけ合ったり、道具の使い方やそれぞれの工夫をシェアしたり。
夜に一緒になることもあり、心強さや安心感につながったそうです。
「一人で黙々とやっていると視野が狭くなりがち。でも、同じ志を持つ仲間とつながることで刺激をもらえたのが大きかったですね」とまどかさん。
独立につながったきっかけ

実はまどかさんには、最初から「どうしても自分のお店を持ちたい」という強い願望はありませんでした。
しかし、イベント出店を重ねるうちに完売するスピードがどんどん早くなり、「もっと作りたい」「より多くの人にパンを届けたい」という気持ちが自然と湧いてきました。
シェアキッチンでは一度に仕込める量や焼ける数に限界があり、設備や時間の制約で“天井”がありました。
「もっと大きなオーブンを導入して効率を上げたい」と考えたとき、その答えは自分たちの工房を持つことでした。
「それでもなかなか一歩を踏み出せなかったのですが、『ここで止まらずにやったほうがいい』と妹に背中を押してもらったのが大きかったですね」とまどかさん。
独立は単なる夢の実現ではなく、成長の先に必要だった選択だったのです。

そう思い始めた頃、ポルカから車で10分ほどの堺市中区辻之で、ちょうどいいサイズ感の元ケーキ屋の居抜き物件に出会い、家族5人で営むパン屋「チームボーダー bakery」が誕生しました。
店舗兼工房を持つことで、一度にたくさんのパンを仕込めるようになり、その分店頭販売やイベントへも多くの数を持っていけるように。
結果として売り上げも伸び、活動の幅は大きく広がっていきました。
店舗は駅から離れている立地、駐車場も1台しかないので集客はどうだろう・・・?とおもっていましたが、メインは半径200m以内のご近所さん。
オープン日に毎日来てくれる方や週に何度も訪れる常連さんが中心で、その方達からの口コミで新しいお客さんも広がっていっています。
オープン日は、作ることに精一杯で告知まであまり手が回ってなかったので来てくれるのか心配していましたがオープン前から並んでくれているお客さんをみてびっくりしたとおっしゃっていました。
チームボーダーの由来とパンへのこだわり

皆さんが気になっているであろう店名の話をお伺いしました。
「チームボーダー」は、まどかさんがいつもボーダーの服を着ていたことから。
色々パン屋の名前の候補はあがってたけれど、いっそのことユニフォームをボーダーTシャツにして「名前も、チームボーダーにしたら?」というアドバイスを受け、このユーモアのあるネームが一番しっくりきたとのこと。
気になるパンは、国産小麦を使用したもっちり食べ応えのあるもの。
小麦以外の原材料もなるべく国産にこだわり、ナッツやチョコなど国産で難しい素材は外国産の中から厳選し、良質なものを使用。
まるっとした可愛いフォルムは、1つ食べたら満腹になるずっしり感が特徴です。
特におすすめは「白パン」と「猫さんのパン」だそうです。
また、クロワッサンや惣菜パンなども日替わりで販売し、今後はサンドなども作っていきたい、とおっしゃっていました。



まどかさんが作るパンは、イベント出店をスタートする前から、家族や友人など身近な人の反応からも評判を得てきました。
たとえば、偏食が多かった3歳の甥っ子も、まどかさんのもっちりパンを好んで食べ、目隠しでも当てられるほどお気に入りだったそうです。
ポルカでは月1販売だったので、日程が合わなかったり、来た頃には完売していたりタイミングが合わなかった方も多かったと思うのですが、今では主に木〜日を中心に店頭販売も行っているのでぜひ訪れて見てくださいね。
ポルカを利用しようか悩んでいる方へ
「最初は私たちも不安でした。でも、ポルカのようにきちんと面談やルールがある環境だと、自分たちのやり方を見直すきっかけになり、安心して挑戦できました。もし少しでも興味があるなら、まずは一歩踏み出してみるのが大事だと思います」
とまどかさんからのメッセージをいただきました。
取材後記
月に一度の販売ということで、なかなかチームボーダーさんのパンに出会う機会がなかった私ですが、取材を通じてたくさんのお話や想いを伺うことができました。
作り手は職人肌で、パン作りに特化している方が多く、集客や販売戦略まで手が回らず「味は美味しいのに…」と燻っている方も少なくありません。その中で、妹さんが経営や販売戦略を担い、さらに家族の協力があってこそ生まれるチームボーダーの形があるのだと感じました。
取材後はもちろんパンを購入し、私のお気に入りのお店になりました。
「小さな夢を叶えるシェアキッチン」として、ポルカからこのような形で卒業した方がいることもとても嬉しく思います。
ぜひ皆さんも、もっちり食感のパンを買いに訪れてみてください。
執筆 / 撮影:ハナミデザイン(横井 千春)
店舗情報

店舗名:チームボーダー bakery
住所:〒599-8245 大阪府堺市中区辻之1186-10
営業時間/定休日:instagramでご確認ください。
食べログ:https://tabelog.com/osaka/A2705/A270501/27148808/
Instagram: @_team_border_
アクセス:泉ヶ丘駅より車で10分、ベルランド病院近く
駐車場:1台 / 近隣にコインパーキングあり
おすすめ商品: 白パン、猫さんのパン、食パン